GNK/ゲシュタルトネットワーク関西
夫婦カウンセリング、カップルセラピー

夫婦・パートナーシップに表れる問題

カップルや夫婦などの親しい人間関係は、強い絆や支えになることも多いのですが、愛情がこじれて恨みや憎しみがわき起こってきたり、深く傷ついたりすることもあります。
パートナーシップや夫婦関係は、その時期であるとか状況によっても変化していくものです。結婚出産、子育て、転居、転職親の介護などなど、いろんな要因が、2人の関係性に影響してきます。

パートナーがお互いに期待する役割も変化していくものです。
お互いでうまく調整できれば良いのですが、コミュニケーションがうまくいかなかったり、ふたりの思いがかけ離れていると関係性が損なわれてしまうこともあります。

DV(ドメスティック・バイオレンス)

「ドメスティック・バイオレンス」とは、配偶者やパートナーなどの親密な関係にある人からの暴力のことを言います。身体的な暴力だけでなく、暴言などの心理的な暴力や、生活費を渡さないといった経済的な暴力、性的な暴力なども含まれています。外出や人と会うことを制限するといったかたちで現れることもあります。

パートナーからこうした扱いを受けると、自己肯定感が持てなくなります。

DVによるPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しむ人もいます。

いったんこうした関係性にはまり込んでしまうと、コントロールされて依存せざるを得なくなるため、一人ではなかなか抜け出せないという難しさがあります。

相手との間に、適切な境界線が引けなくなってしまうからです。

もともとの家族関係にも困難があってアダルトチルドレンと言ってよいような対人関係のパターンを身につけている人たちも、DV的な関係性に苦しむことがあります。

意識しないまま、子どもの頃と同じような関わりにはまり込んでしまうのです。

こうした状況から抜け出すために、何ができるでしょうか?

女性センターや警察に相談したり、シェルターに避難することが必要なこともあります。

物理的に距離を取った後でも、自分の感覚や感情に従って自由に生き方を選択できるまで回復するために、カウンセリングやセラピーが手助けとなることも多いでしょう。

大阪府女性相談センターなどの公的な機関でカウンセリングを受けることもできます(大阪市、堺市、岸和田市、豊中市など、各市に女性センターや男女共同参画センターが設置されており、DVやストーカー、夫婦・家庭内のトラブルについて相談することができます)。

また、ゲシュタルト療法も、夫婦関係の改善や、適切な境界線を持つために役に立ちます。

モラハラ(モラルハラスメント)

モラハラ(モラルハラスメント)とは、言葉や態度によって精神的な苦しみを与える、DV(ドメスティックバイオレンス)の一つです。

フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴエンヌが提唱した言葉だそうです。

パートナーの言動ひとつひとつに文句をつける、言葉で人格を否定する、見下したり馬鹿にする、些細な間違いや失敗をいつまでも責め立てる、どんなことだも相手のせいにして謝らない・譲らない、平気で嘘をつく、無視をしたり口を聞かなくなる、怒ったり怒鳴ったりする、共感性に欠ける、嫉妬や依存などなど。

パートナーのこうした言動にさらされ続けると、身体的なDVと同じく、心身に深い傷が残ります。

家庭内ではひどいモラハラをしていても、世間体は良くて外ではいい顔しか見せないため周りに理解してもらいにくく、孤立してしまうということもあります。

パートナーに対して従順すぎたり、自己主張や適切な境界線を引くことが苦手なために言いなりになってしまう人もいます。

こうしたときも、まず誰かに相談するということが必要です。離婚を考えているなら弁護士に相談してもいいですし(法テラスなどの無料の相談先を利用することもできます)、カウンセラーに話をすることで自分に何が必要か、何を求めているかということが明確になる場合もあります。

カサンドラ症候群

「カサンドラ症候群」または、「カサンドラ情動剥奪障害」という言葉は、聞きなれない人も多いかもしれません。これは、アスペルガー症候群などの発達障害のパートナーとの情緒的な関係がうまくいかないために起こってくる身体的・精神的な苦痛を表している言葉です。

発達障害のひとつに分類されるアスペルガー症候群は、コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、人間関係がうまくいかないといった特徴を持っています。

アメリカ精神医学会のマニュアル(DSM-5)では、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」としてまとめられています。

  • コミュニケーションの障害
  • 対人関係の障害
  • 特定の物事へのこだわりや興味

といった症状が中心で、仕事や家庭の人間関係にさまざまな影響を与えることがあります。

アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害)の配偶者を持つ人は、コミュニケーションの不調から自信を失ってしまい、さまざまな苦痛や困難を体験します。

「カサンドラ症候群」という名称は、ギリシャ神話のトロイの王女の名前に由来しています。カサンドラは、太陽神アポロンにより、未来を予知する力を授かります。

彼女は自らがアポロンに見捨てられるという未来を知ってしまい、アポロンの愛を拒みました。

そして怒ったアポロンに「カサンドラの予言は誰も信じない」という呪いをかけられてしまうのです。
カサンドラはトロイの滅亡を予言しますが、誰も彼女の言葉を信じず、予言通りトロイの街は陥落してしまいました。

カサンドラと同じように、アスペルガーの配偶者とのコミュニケーション不全に悩む人は、その苦しみを周りになかなか理解してもらえません。

夫婦関係という距離の近い人間関係のストレスは、次のような反応を引き起こすことがあります。

  • 自尊心の低下
  • 不安や抑うつ
  • イライラや怒り
  • 不眠
  • 過食
  • 疲労
  • 頭痛などの身体症状
  • その他のストレス関連障害

浮気や不倫と夫婦関係

エスター・ペレル『不倫と結婚』(晶文社、2019年)は、不倫と結婚について次のように書いています。

かつて人々は結婚して初めてセックスした。今、私たちは結婚して他の人とセックスするのをやめる

エスター・ペレル『不倫と結婚』(晶文社、2019年)

かつては経済活動や生活共同体としての側面が大きかった結婚も、現代社会では、愛情で結びついたパートナーシップといったところが強調されるようになりました。

安心感、子ども、財産、世間体など伝統的な家屋が与えてくれることになっていたものすべてをいまなお欲し、かつ伴侶に愛され、欲情され、興味を持ってもらいたがっている。夫婦は親友であり、悩みを打ち明け合う相手であり、おまけに情熱的な恋人であるべきだと信じている

エスター・ペレル『不倫と結婚』(晶文社、2019年)

この本の面白いところは、「不倫や浮気は悪いことだ」と決めつけるのではなく、人々は何を求めて不倫をするのか(著者によると、「違う相手」ではなく「違う自分」を求めているのだということです)、パートナーシップにどんな影響を与えるのかといったことを、長年のカップル・セラピストの経験から詳細に描き出しているところでした。

エスター・ペレル『不倫と結婚』(晶文社、2019年)

夫婦関係やパートナーシップをふりかえるための本

夫婦関係をふりかえるために役立ちそうな本を何冊か紹介します。

水島広子『対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係』(創元社、2011年)

対人関係療法で改善する 夫婦・パートナー関係

対人関係療法(Interpersonal psychotherapy、IPT)とは、ハリー・スタック・サリヴァンの精神医学における対人関係理論に由来する現在の対人関係に焦点を当てた短期心理療法です。

うつ病などの精神疾患に対して、認知行動療法と同じくらい治療効果を持つとのエビデンスがあり、応用範囲も広がってきています。

対人関係に焦点づけられているだけあって、夫婦関係のズレや問題に対するアプローチとしても優れています。

本書は、夫婦関係のこじれを、相手の性格や倫理観の問題として捉えるのではなく、「役割期待のずれ」という視点からとき解く手がかりを与えてくれます。

スー・ジョンソン『私をギュッと抱きしめて―愛を取り戻す七つの会話』(金剛出版 、2014年)

私をギュッと抱きしめて―愛を取り戻す七つの会話

ゲシュタルト療法、来談者中心療法、愛着理論などの視点やアプローチを統合した心理療法ある感情焦点化療法(Emotionally focused therapy :EFT)に基づいたカップル・セラピーの本です。

百武正嗣『家族連鎖のセラピー―ゲシュタルト療法の視点から』(春秋社、2012年)

家族連鎖のセラピー―ゲシュタルト療法の視点から

夫婦関係や家族の問題は、個人ではなかなか解決できないこともあります。お互いが違う家に育ち、それぞれの家の歴史を背負っているからです。世代間に伝達される「愛情のもつれ」(家族連鎖)を、「今―ここ」の自分に気づくことで身心を統合するゲシュタルト療法の視点から明らかにしてくれる本です。

夫婦と家族のためのゲシュタルト療法・カウンセリング


ゲシュタルト療法は、「気づき」に基づいた心理療法です。
「私は自分の人生をどのように生きているか」「私は今、どのように他の人(パートナーや家族)と関係しているか」「私は今、どんな選択をしているか」
こうしたことについて、気づきが高まると、より創造的で充実した人間関係や人生の選択ができるようになっていきます。

ファシリテーター(セラピスト)は、夫婦やカップル、家族が陥っているネガティブで破壊的なパターンに気づくようにサポートします。多くの夫婦・カップルが、まま同じような関係性のパターン(それも、お互い傷つけあったり、損なうようなやりとり)を、無自覚に反復しています。

それに気づくことで、これまでのパターンをより豊かで支え合うような新しいパターンに変えていくことができるかもしれません。

ゲシュタルトの祈り

夫婦カウンセリングやカップル・セラピーを受けたからといって、必ずしも関係が元に戻ったり、「復縁」したりするとは限りません。

「私は本当は別れたかったんだ」と気づくことだって、意味があるわけです。

パートナーと別れた方が、お互い、自分らしく生きていくことができることもあるかもしれません。

「ゲシュタルトの祈り」は、ゲシュタルト療法を生んだフリッツ・パールズが、ワークショップなどでよく朗読していた詩だそうです。

ゲシュタルトの祈り-Gestalt Prayer-

私は私のことをする、あなたはあなたのことをする。

私はあなたのために生きているわけではないし、 あなたも私のために生きているわけではない。

あなたはあなた、私は私。

もしも、お互い出会うことができたら、それはすばらしいこと もし出会えなくても、それはしかたのないこと。

I do my thing, you do your thing.

I am not in this world to live up to your expectation. And you are not in this world to live up to mine.

You are you and I am I.

And if by chance we find each other, it’s beautiful. If not, it can’t be helped.

Frederick L.Pearls
(フレデリック・S・パールズ)

「それはしかたのないこと」って、夫婦や親子だけではなく、どんな人間関係にもあることですよね。

変えられないこと、しかたのないことをどう受け入れるか、ということも人生においては大切な課題です。

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