GNK/ゲシュタルトネットワーク関西
エンプティ・チェア

ゲシュタルト療法でよく用いられるエンプティ・チェア(空椅子の技法)について、ゲシュタルト・ネットワーク関西代表の白坂さんに聞いてみました。

エンプティチェアってお墓参りみたいなもの?

「ゲシュタルト療法のエンプティチェアっていうのはどういうアプローチなんですか?」

「要は墓参りなんですよ」

「どういうことですか? もう少し詳しく説明してみて」

「この世にいない人とでも語り合えるっていうこと」

「イタコみたいな感じ?」

「うんまぁね、イタコぽいですよね」

「怪しくないの?」

「怪しいです(笑)。まぁでも昔からお墓参りに行って、いろんなことを報告したりとか、お願いごとをしたりとか、やりますよね? そのお墓を、椅子とか座布団に置き換えたのがエンプティチェアと言ってもいいんじゃないかなと思います。昔からの知恵ってそういうのがあって、お墓に参って、いろんなことを思い出したり、相談したり、報告したりするなかで気持ちの整理をつけていくってことがあったわけです。それを凝縮したグループの中で行うっていうのがエンプティチェアですね」

「亡くなった人とやるんですか?」

「死んでる人だけじゃないです。生きてる人を椅子に置くこともできるし、夢の中の登場人物や、自分自身の内側にある葛藤や、体の症状なんかも置いてみるといろんな気づきが生まれてきます」

「具体的にはどんなふうにするんでしょうか? 空の椅子を目の前に置くんですか?」

「空の椅子とか座布団を置いて対話してみると言うことです。そうするとその人との距離感が自分自身で実感できるんですね。実際に言葉にしてみることで自分の思いや気持ちが確かめられるということがあるし、相手の側の椅子に座ってみることで、その人の身になってみることができるわけです」

エンプティチェアの利点

「そういう風にするとどんないいことがあるんでしょうか? 他のカウンセリングのアプローチと違う特徴ってなんですか?」

「そうまぁ、自分の中にある、例えばお母さんへの思いとかを、空椅子のお母さんに対して表現してみることでより明確になるということがあります。外在化することで、はっきりしなかった感情だとか、言葉にできなかった思いなどが、具体的に今ここの体験として表現されるわけです。そして自分の中にあるものを俯瞰して見ることができる。グループにとっては、その人の心をグループ全体で共有できる。目で見える形で分かち合うことができる。ゲシュタルトセラピーでグループですることが多いから。個人でもできるし、一対一でエンプティーチェアーを使うこともあるけれども。グループで共有することで、皆、自分のことも投影しながら見ることができる」

「この人が悩んでいるのは、こういう状況でこういうことが起こっていたからなんだってことが周りのみんなにも共有できるし、共感できるって言うことですか?」

「1人の人が勇気をもってもって発した言葉や表現したことがグループにも影響を及ぼしますよね。私だけじゃないんだって言う。私だけがそういう苦しみとか悩みを持っているわけじゃないんだっていうことがわかる。分かち合えるし、わかってもらえると言う体験が生まれるわけです。そういう効果があるわけです」

相手の身になる

「エンプティチェアの良いところは、その人になってみるということができることですね。その人の席に座るだけで、その人の気持ちを理解しようと言うことではなく、ただその人の席に座ってみる。思考やイメージではなくなってみるということ。子供が親に反抗していて、自分が親になったときに初めて親の気持ちがわかるっていうことがありますよね。そういう感じです」

「それがエンプティチェアのいいところですよね。視点を変えられる、体験を変えられる」

「そうそう体験ですよ。エンプティチェアに置くのは、よく知っている人ということが多いんですよね。家族だったり友達だったり。その人になってみるということは、その人のからだになっているわけです。相手の身になるということ。そしてその人の目から自分を見ることができる」

「相手のみになって自分を見るということは、その人のからだを体験するということでもあるし、お互いの距離感だとか角度だとかそういった関係性を体験するっていうこともあるわけですね」

「そういうことも含まれます。だからエンプティーの椅子や座布団を置く位置だとか、距離感だとか、そういうところにも心理的状態が表れてくる」

グループのなかでエンプティチェアを用いるということ

「ゲシュタルト療法のエンプティチェア技法というのは、もともとはサイコドラマから来たんだろうけれども、現代のいろんな心理療法にも取り入れられていますよね? それだけプロセスを動かす力があるからなんだろうけれども、このあいだ百武さんが話していたみたいに、かたちだけ真似ても、椅子を置いただけで何も起こらないじゃないかっていうこともあるかもしれない。ゲシュタルト療法の考え方というか、哲学的な背景も大事だし、体験的に細かなところもトレーニングを通じて学んでいく必要がありますよね」

「そんなに丁寧に関係性を見ていくことってあまりないでしょ? そしてそれを人が目撃してくれているっていうところが、お墓参りとは違うところですよ」

「グループでやるメリットというか、利点ですよね」

「うんうん。そこに対して自分とは違う世界観が入ってきて、クリエイトされていくのかというところがお墓参りとはちょっと違うところですね」

「グループでやると、フォーカシングで池見さんがよく言うクロッシングていうことが起こってくるじゃない? それが場を豊かにするっていうところがあるのかな。私はこう感じた、私はあなたのワークを見ていてこんな体験をしたって言ってくれることで、クライエントの体験もより豊かになるし、いろんな視点を取り入れることができる」

「そうそう。それが自分にとって豊かになるのであれば取り入れていけばいいし、そうでなければお返しすればいい」

「うん。相互に豊かになっていく可能性がそこにあるっていうことが面白いところかな。そこにエンプティチェアによって外在化できたり、視覚化できたり、演劇化、ドラマ化できたりする仕掛けがあって、よりいっそうプロセスが促進されるということになるのかな。というわけで、興味を持った方は、気づきのワークショップにぜひ参加してください。宣伝したところで、今日はおしまいでーす」

ゲシュタルト療法「気づきのワークショップ」

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