先日、2023年1月7日~9日に一般社団法人日本ゲシュタルト療法学会(JAGT) https://www.japangestalt.org/ のワークショップ大会である映画を観ました。
『翼なき飛翔ーアーノルド・バイザーの生涯(Flying Without Wings-Life With Arnold Beisser,MD)』A Film by Liv Estrup
ゲシュタルト療法の哲学に『変容の逆説的理論』というゲシュタルト療法の独自理論があります。それは、創始者の一人フリッツ・パールズの弟子でアーノルド・バイザーが人生をかけて提唱したものです。
私は、今までこの理論のことは知っていましたが、このような物語があるとは知りませんでした。この映画を観た時に、パールズやバイザーのような先人がいてくれて、ゲシュタルトをやってきたことに間違はなかったと思えました。
そして、人生をかけてこの理論を提唱したという表現は、バイザー(通称アニー、以下アニー)が大学時代からテニスの名プレイヤーでした。何かも手にしていたのです。そして、彼が25歳の時に悲劇がバイザーの身に降り掛かります。医師として行っていた朝鮮戦争でポリオにかかり全身不随になったのです。変容の逆説的理論はここから生まれるのです。
時代もあり、呼吸が上手くできなくなった時、鉄の肺と呼ばれた首から下全身を覆う鉄の呼吸器に長い間入り治療を余儀なくされました。
絶望と、からだを元にもどしたいという思いの中で。。。中略。
そのような中で、アニーは精神科医となりパールズと出会います。パールズに出会ってアニーは障害への捉え方が変わったと言います。
『今の私を否定して、あたらしい私になることはできない』と。
勇気とか精神力ではなく、障害を受け入れ「今ーここ」に集中することだと。
この論文はパールズの75歳の誕生日に贈られたそうです。アニーのパートナー、リタ(下の写真)はアニーと出会えた人は幸せだと語っています。リタも、もちろんアニーと結婚できたことを幸せだったといっています。
この映画に日本語訳を、現JAGT理事長陣内祐輔がつけてくれました。このビデオを日本で披露するための尽力に感謝です。
わたしに無いものを探すのではなく、あるものを見る。アニーが偉業を成し遂げたのではなく、名もない人、すべての人に自分の物語があり、「今ーここ」に居ることができるのだと思いました。
以下は、JAGT初代理事長 百武正嗣談(facebookより引用)

JAGTの三日間にわたったワークショプ大会が終わった。ゲシュタルト療法はその背景に四つの哲学がある。この哲学の意味を理解しないとゲシュタルトは表面的なものになってしまう。
まずは現象学の「今ーここ」「ありのままに現象をみる」という哲学は、様々なカウンセリングに取り入れられるようになってきた。
そして実存主義は「孤独、不安」「人生の不条理」から逃げるのでなく受け入れる人生の選択をせまる。
我ー汝は、「我ーそれ」の関係から「我ー汝」の関係へ、という提唱を世界のセラピストがとりいれるようになっている。
余談であるがカールロジャーズは、オーム返し、傾聴、共感だと日本では勘違いされているが本人はそのように言われることを嫌っていた。彼自身は「グロリアと3人のセラピスト」の中で、私が関わったのは我ー汝てあると、述べている。
四番目の「変容の逆説的理論」はゲシュタルトの独自な哲学である。もしあなたが本当に変わりたいなら、今のあなたのままでいること、とアーノルド バイザーは言う。私たちは今の自分を否定して新しい自分になることは出来ない。という哲学である。
このバイザーの半生の記録映像を見る機会を得た。バイザー医師は若い時に朝鮮戦争に行きポリオに掛かってしまった。
有望なテニスプレーヤーでも若手のホープであった彼の人生は絶望の縁に立たされた。自力で呼吸が出来なくなった彼は鉄の人工呼吸器に全身を埋めるしかなかった。どんなにもとの有能な人間に戻うとしても全身は麻痺して身動きできない。最後にたどり着いたのが「今の自分を受け入れる」ことであったのだ。その時に大きな変化が起きたことに気づいた。
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