
ゲシュタルト療法は、「今、ここ」の気づきに焦点を当てた、実践的な心理療法です。
「今、ここ」で、あなた自身が何を感じているか、何に気づいているか、ということに焦点を当てて、本来のあなた自身に出会います。頭で考えている(あるいはこれまでの人生で鵜呑みにしてきた)「こうすべき」「してはならない」ではなく、あなたのからだが何を望んでいるか、求めているかということが、あなたらしく豊かに生きていくための羅針盤となります。
「今ここの気づき」の心理療法
ゲシュタルト療法(gestalt therapy)は、精神分析家でもあったフレデリック・パールズ(Frederick S. Perls)、同じく精神分析家でゲシュタルト心理学者だったローラ・パールズ(Laura Perls)、文筆家としても著名だったポール・グッドマン(Paul Goodman)らによって創られた心理療法です。
ゲシュタルト療法では、「気づき(awarness)」を重視します。
何かに「気づく」ことは、動物の基本的なこころのはたらきです。ところが人間は、思考を発達させたため、「こういうものだ」「こうあるべきだ」という考えのフィルターが強く、目の前のありのままの現実や、自分の欲求がちゃんと見えなくなってしまうことがあるのです。
「あの人は私を嫌ってるに違いない」「怒ってるんじゃないか」「親の期待に応えなくてはならない」などと考えすぎて、相手のことや自分自身の気持ちがわからなくなってしまう、といった経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
ファシリテーター・セラピストの手助けで、「今ここ」で起こっている現象や体験にありのままに気づくことで、滞っていた成長のプロセスが動き出す、そんなセラピーがゲシュタルト療法です。
気づきの3つの領域
ゲシュタルト療法では、「気づき」を3つの領域から捉えます。
ひとつは、「内部領域」と呼ばれています。これは、からだで感じている気づきのことです。「ムカついている」「胸が苦しい」といったからだの感覚は、そのまま、気持ちを表すことばでもあります。
二つ目は「外部領域」です。五感で知覚している周囲の環境の気づきです。私たちは、見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わうといった五感を通じて、外の現実世界とコンタクトしています。
三つ目は、「中間領域」です。これは、思考や空想といった頭のはたらきを意味しています。内部領域と外部領域の「中間」にあると仮定されているため、こんなふうに呼ばれるのです。
中間領域の特徴は、今ここから離れて「いつか、どこか」「もしも」といった目の前にない何かを思い浮かべることができるということです。
この能力のおかげで、私たち人間は、遥か遠くの宇宙のことを考えたり、先のことを計画したりできるようになりました。
でもその能力は諸刃の剣で、将来のことを悲観的に考えすぎて落ち込んだり、他者の気持ちを読みすぎてのびのびふるまえない、といったことも起こってきます。
今、自分の意識がどの領域にあるのか、こうしたことに気づくだけでも、「頭の中だけで悪く考えすぎて、相手をちゃんと見ていなかった」などとわかることもあります。
動画で見るゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法について、日本ゲシュタルト療法学会初代理事長の百武正嗣さんにインタビューしてみました。