
「良い母親になれない辛さ」とゲシュタルト療法
2年間のトレーニングコースが終わりました。長いような、あっと言う間だったような不 思議な感覚です。トレーニングコースの受講を検討されている方の参考になればと少 し振り返ってみます。
他県で、既にゲシュタルト療法のグループセラピーに約 3 年通っていた私は、さらに深くゲシュ タルト療法の理論が知りたいとゲシュタルトネットワーク関西でのトレーニングコースへ参加を決めました。
出産後すぐの子育てにおいて、 「良い母になれない」辛さに悩んでいた私でしたが、3 年間のゲシュタルトセラピーで 自分と向き合い、少しづつ自分の生きづらさから解放されていくのを感じていました。 一方グループセラピーはワーク(ゲシュタルト療法体験)中心で、ゲシュタルト療法の 理論を体系的に知る機会は余り得られませんでした。私は自分の変化を感じる中で、 ゲシュタルト療法では「人が変化するときに何が起こっているのか」を理論的に知りた くなっていたのです。
悩みを話せる場所
トレーニングコースでは理論と体験の両方が提供されています。理論は毎月変わるフ ァシリテーター陣がテキストをベースに講義を行います。体験面ではワークが中心で す。自分がクライアントの際は、その時話したいことは何でも話すことができます。人 間関係の悩みでも、体の感覚でもかまいません。普段うまく言葉では言い表すことの できない胸のザワザワや肩の強ばりなどもファシリテーターに伝え、ゆっくりと自分に 向き合って感じていきます。ワークが進む中で、自分に何が起きているかに気づき、 何に引っ掛かり、それが自分にどんな意味があったのかを知ることができます。(ワー クはとても深いものですが、ここで触れるととても長くなるので興味のある方は他のコ ラムを探してみてください)
会話と対話の違いから生まれてくるもの
日常では自分のことを話している時間はあまりない気がします。いつも誰かの話、どこかの噂、生活する上での大切な情報。自分の口から話していることなのに、自分自身のことじゃない、そんなことさえわからず日常を過ごしていました。ゆっくりと自分に ついて話すこと、言葉にしながら自分に向き合う機会、否定されず分析されず誰かに 聞いてもらう安心感。文字にするととても当たり前のことに思える時間が、自分には足りていなかったのだとワークを通じて気づかされます。 トレーニングコースのメンバーは本当に多様で、知っている人が1人もいないその場 に私は最初、居心地の悪さを感じていました。性別、年齢、社会での役割、背景、ゲ シュタルトの経験年数など、重なることがあまりないメンバーの中で私はどこまで自分 のままで居れるのだろうと。 しかし真剣に自分と向き合いたいと共にトレーニングを受け、ワークでは自分を開示 しその場のメンバーに受け止めてもらう、誰かのワークではその思いをただ聞き、自 分の中に湧く感覚を言葉にして届けること。それをひたすらに重ねると、あれほど感じていた居心地の悪さは無くなり、やがてワーク中に訪れる誰かの大切な気づきの瞬 間に、皆と共に居れることを喜べるようになっていました。ゲシュタルトでは「場」の力 を重要な要素としていますが、トレーニングコース 2 年間で私が充実感を得られたの は、ここで出会った仲間が居てくれたからこそだとも思っています。
子どもとの心の交流

このトレーニングコース2年間の最終日、新型コロナ禍であったため、オンラインでのトレーニングを受けている私の部屋に子どもが来て、背後でライトを灯したり消したりしています。ZOOM の 参加者にも勿論その光のオンオフが映ります。順番に皆が最後の挨拶をしています、 灯をオン、オフを続ける子どもに見やると、何か言いたげに見えます。以前の私ならきっとその 動作をやめて部屋から出ていくように言いました。でも、今の私には、何か言いたげな、でも言葉に上手くできないその気持ちのまま居る子供が可愛くて愛しくて。我が子の髪にそっと触れじんわりと心が温かくなり、そういえば、この子が、ゲシュタルトに出会うきっかけだったなあとしみじみ感じていました。オンオフはしばらく続きましたが、私は その動作をゆっくりと見守ることができ、子どもは気が済んだように友達と遊びにいきま した。
良い母親からの解放
私は子育てにおいて「良い母になれない」自分の言動に辛さを感じていました。子どもと対している時、どのように私は辛くなって、何が自分に起きていたか、どんな意味が あったのかを少しずつ知ることができ、子育てが楽になりました。同じように辛さを感 じることはありますが、辛い自分を否定せずとゆっくり向き合い続けることで、辛さは やがて止むことを知りました。辛さが止むことを知ると、辛さが湧き上がること自体が 怖くなくなりました。目の前にいる子供が求めることにそのまま応えていればいい。自 分が辛くなった時には、急がずに焦らずにそのままを感じればいい。今ここにそのま まの私で居ればいい。
そのままにみる、気づき
他県での3 年間、ワーク中心のグループセラピーで自分と向き合い、その後 、ゲシュタルトネットワーク関西で2 年間のトレーニングコースで理論を知り、更にワークを重ねてきました。日常生活の中で、ワークでの気づ きと理論が私をサポートしてくれる気がしています。子供を感情的に叱ってしまった時、 家族との行き違い、仕事や人間関係での悩み、生活の中で起こる些細な心の揺れを 観察できるようになったことは、元々理屈っぽい性格の私には合っているように思い ます。日常の自分の心の揺れを理解し、受け入れ寄り添う。もし大きな揺れの時には ゆっくりとただ揺れを感じる。そうして自分に今起きていることを感じていくと、「前もこ ういうことがあった」と過ぎた出来事をわざわざ掘り返して自分を責めることも、未来を先取りして心配しすぎることも少なくなってきた気がしています。
受講を決めた際には「自分を変えたい」という思いは無かったはずなのに、この 2 年 間を終え確実に何かが変わった、進んだという感覚があります。それは自分自身なのか、自分の物の見方、捉え方なのかわかりません。ただ私はどうしたいか、ゆっくりと 自分に聞くことはできる。そう感じています。
待ってますー判断しないゲシュタルトの世界・唯一無二の存在
・受講を検討している方へ 本で知ること、インターネットで知ることだけでは経験できない、リアルなゲシュタルト 療法の世界。飛び込むには勇気がいることだと思います。私がかつてそうだったよう に。 飛び込んで真剣に自分に向き合った時に見えるもの、気づくことは、どの本にも書い ていません。誰からも押し付けられず、誰にも明け渡さなくていい。誰とも比べられず、 誰かに分析されない、誰も評価できない。私だけの、あなただけの、自分だけのもの だと思っています。 あなたがどこかにあると思っている、いつか出会いたいと思っているその大切な何か を見つけに、一歩踏み出して飛び込んでみてください。 いつかワークの場でお会いできるのを楽しみにしています。