GNK/ゲシュタルトネットワーク関西

刑務所出所者とのグループセラピー:「つみ⭐︎げしゅ」について聞いてみた。

刑務所出所者とのグループセラピー:「つみ⭐︎げしゅ」について聞いてみた。

刑事施設経験者とのゲシュタルトセラピー

久松「では今日は、つみゲシュについて、岩崎風水さんと白坂和美さんに聞いてみたいと思います。正式名称は何でしたっけ?」

風水「「刑事施設経験者とのゲシュタルトセラピー」です。刑事施設、刑務所という言葉が怖いと言われたので、ドストエフスキーの長編小説「罪と罰」をオマージュして「罪とゲシュ」と名付けました。パロディーでもあります。その後、罪という言葉も怖いと言われたので、「つみ☆げしゅ」とひらがな表記にしました」

久松「まずお二人に、刑事施設経験者とのゲシュタルトセラピーが、何年くらい前から、どんな経緯ではじまったか話してもらえますか?」

風水「3年、4年くらい前かな? ちょっとまって、罪ゲシュ第一回のチラシを探してみるから…刑務所・ゲシュタルトで画像検索すると全部出てくるの。

2018年2月、3年前か。怪しいチラシ笑。

白坂「チラシの一覧を載せても面白いかもね」

風水「では貼り付けていきます。二ヶ月後の二回目は『罪とゲシュ2』」

風水「3回目はその翌月。『罪とゲシュ3』」

風水「罪とゲシュ3から4か月後に「罪とゲシュ リターンズ」です。シリーズモノ定番のテコ入れで毎回名前を変更しています」

風水「リターンズの翌日は『ジャクリーンの仏前ゲシュタルト』を予定していたけど、台風で中止となりました。」

風水「年が変わって2019年3月、『プレイバックシアターと罪とゲシュ』を行いましたが、この頃は既に認知度も上がり通称「罪ゲシュ」とよばれるようになっていました。

風水「この「プレイバックシアターと罪とゲシュ」で名古屋のお寺「西念寺」とご縁ができ、2019年5月(2か月後)に名古屋で開催をしました。」

風水「2019年9月(四カ月後)にまた大阪の楷定寺に戻って今の表記の「つみ☆げしゅになりました。」

https://www.kokuchpro.com/event/5760e7153a30e9e9c92eba4a113b942b/

風水「2020年1月には東京でも開催しました。」

風水「学会の研究発表の枠をいただき、『つみ☆げしゅ参加者とリフレクティング』」をしました。」

風水「2020年9月には東京の阿佐ヶ谷で開催です。」

ゲシュタルトセラピーとの出会い

久松「うん。では、3年前に、風水とかずりんが出会って、こういうことをやってみようと思ったきっかけを話してください」

風水「きっかけは最初は小竹広子弁護士が…」

白坂「7月にゲシュタルト療法学会のオンライン集会でも話してくれたあのファンキーな弁護士さん」

風水「俺が出所してから、まず、小竹広子弁護士のいる東京共同法律事務所に出入りするようになって、はじめてあったときに小竹さんに、NPO法人ま~るというところで、刑務所出所者の自助グループというのをしていて、毎月おしゃべり会をしているから参加しませんかって誘われて、そこにしばらく参加し続けて。それが2014年くらいかな。俺がゲシュタルトセラピーに出会ったのはいつだったっけ。4年くらい前かな、2016年くらいに、初めて、刑務所出所者のゲシュタルトセラピー・主催NPO法人ま~るの小竹広子さん、っていう感じで開催されたの。」

久松「そんとき誰がきたんですか? ファシリテーターで」

風水「百ちゃん(百武正嗣氏)。日程を見たら2016年4月16日だった。こちらのチラシは2017年7月開催のもの。小竹さんが作ったもの。」

久松「どういう狙いがあったんですか? 自助グループとは何か違う目的で?」

風水「俺は小竹さんほどうまく話せないけど、そこを話さなきゃね笑。まあ、過去をふりかえること。自分のいた刑務所は教育プログラムなんて、心に響くものは何もなかったの。映画で話題の『プリズン・サークル』のようなグループセラピーのプログラムはまったくなかった。」

*『プリズン・サークル』(この映画、機会があったらもう一度観たい)

久松「あれはあそこだけなんでしょ? 『プリズン・サークル』のような、治療的共同体? ああいいうとりくみは」

風水「そうです。一万分の一くらいの確率でしかあそこに入れないの」

久松「むちゃくちゃ優秀な人たちが選ばれてるんだ」

風水「いや、優秀ってわけじゃなくて、運の良さであそこに入るんだけど、出てきた後に俺たちは優秀だってなってる人にあったから、いけすかないんだけど笑」

久松「いけすかないんや笑。まあ、一万分の一の確率で当たったら、自分は優秀だって思いたくなるのもわからなくもないけど笑」

風水「そこから出た人たちなんかに負けるかよって感じで、自分で出所者のためのグループセラピーを企画しようと思って、刑務所出所者を支援する別のNPO法人に軒下を借りて、そこでグループセラピーをいろいろやった。ゲシュタルトセラピーに限らず、室城さんに協力してもらって再決断療法やTA(交流分析)もやった。ナラティブ・セラピーをやったり、発達支援コーチングやヨガ、日本一と思える講師に声をかけていろんなグループワークをやった。

はじめてのゲシュタルトセラピーを百ちゃんから受けて、それに衝撃を受けて、一年で4回くらい個人ワークをする経験があったのかな。それで俺も、ゲシュタルトセラピーができるようになりたいと思って、3ヶ月くらいかけて70時間プレトレをこなして、GNJ(ゲシュタルトネットワーク・ジャパン)のトレーニングコースに入った。リキハウスでのワークショップに通い始めたのが2017年1月だった。」

白坂「それ、どんな衝撃だったの? 百ちゃんのワークを受けて」

風水「はじめてのワークのときは、刑務所で自分の手首を噛み切って、床一面に血で寒いって文字を書いたことがあって、その話をしたんだ。ワークの流れとしては、手首に傷があるんですって話して、これ、今もケロイドになってるんだけど見えるかな。ここを噛んだんですって話したら、じゃあそれを再現してみてと言われて、今ここで手首を噛んでそのときその場の状況を再現した。そしたら、そのときの状況を思い出して、抑えられていた感情に気づいたんですよ。そのときは、部屋がめちゃめちゃ寒くて、食事も与えられなかった。手首を噛みちぎるきっかけになったのは、報知機っていうナースコールみたいな外に連絡するものがあるんだけど、その保護房にはそれがなかったの。ここまで人権侵害されるのかって腹ただしくなって、ボタンがないのは向こうの落ち度だから、俺が手首を噛み切るのもしかたがないよねって思って、手首を噛んだ血で床一面に寒いって書いて天井のカメラに見せて訴えたの。で、そんときの気持ちはやっぱり、刑務官ぶっ殺したいっていう怒りの感情、それを抑えてたなあって気づいた。そのワークのあとぶりかえしがひどくて、ニ、三日はふとしたことで涙がポロポロ出たりっていう状況になってました」

白坂「それは、いい兆候だったわけね。いい兆候というか、自分に触れたということね」

風水「あとは、その頃すでに、お酒をやめたい人たちの自助グループに通っていて、そこでも12ステッププログラムっていう自分の過去を振り返るワークをやってたんですね。でもこれは、ゲシュタルトは、それよりも特化して自分の人生を開けるものになるなと感じたんです」

反省させると犯罪者になります

白坂「それさ、ほんとそうよね。今また岡本先生の本(岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』新潮新書、2013年)を読み返してるんだけど、感情にいい悪いはなくて、抑圧していたものを表現させることが大事なんだって。反省させるよりも、表現すること。そしたらそこに気づきが生まれる。小竹さんもそうでしょう? 小竹さんも、岡本先生も、反省させようとする刑務所の教育システムが良くないといって、だから、被害者や遺族の気持ちを知るためじゃなくて、自分の気持ちを知るためにゲシュタルトを起用したわけやんな。小竹さんもそういうところに賛同してゲシュタルトをやりはじめたんじゃないの? 反省させると犯罪者になりますっていう、岡本先生の。結局、刑務所では教育プログラムで被害者の気持ちを理解させようとしたわけじゃない。でもそうすると自分はくだらない取るに足らない人間ということになってくるから、もうぜんぜん、生きる力とか、再犯を防止することにつながらない。ゲシュタルトでは、被害者の気持ちを理解するためにはまず、自分自身の抑圧された感情、怒りとか殺したいとか、良い悪いでは関係なくて、そういう感情があったんだって気づいて、今ここで表現して、その後に、人の気持ちも理解していけるようになるっていうこと。岡本先生はそういうことをやりはじてたわけですよね、刑務所で。私はそういうところが、風水にとっても衝撃的だったのかなあって」

風水「刑務所でも、ダメなプログラムがあって、命の教育っていう、生命犯、人の命を奪った人に対して、被害者の気持ちや被害者遺族の気持ちになって手紙を書いて反省を述べよ、みたいなものがあるんだけど、やっばり状況的に、仮釈放が欲しいがための作文をしてしまう。そういうベクトルがあって、つまりは自分を偽るのがどんどんうまくなっていくっていう。だから上からの教育っていうのはぜんぜんものにならないというか、役に立たない。上の人っていうのが、無難に生きてきた刑務官とか、罪を犯す人の気持ちが分からない人たちだから」

白坂「結局、罪を犯すようになったプロセスを自分で見て、たとえば子ども時代に親にこうして欲しかったとか、こういって欲しかったといったことにも気づいて、自分のニーズが満たされて初めて、相手の気持ちも理解できるようになるってことやんね。だから、いきなり被害者の気持ちを理解しなさいなんてそれは無理で、かたちでしかなくなってくるねんね」

風水「自分の犯した罪について反省文を書きなさいっていう、そういうプログラムもあるんだけど、それもやっぱり仮釈放のための作文になっちゃって、自分を見つめるということからはほど遠いんだよね」

白坂「優等生の反省文みたいになっちゃう」

風水「それで『プリズン・サークル』では、そういう変な力が働かないところでグループセラピーをやろうとしている」

久松「まったくないというわけでもないんだろうけど、そういう変な力をなるべく少なくして、受刑者が自分に向き合うことのできる場を作ろうとしてるのかなと映画を観て感じた」

風水「うん。実は教育プログラムが刑務官じゃないんですね、あそこは。**館とか大林組とかが、施設警備とか教育プログラムに入っていて」

白坂「大林組って、ゼネコンの?」

風水「そうそう。PFI刑務所(Private Finance Initiative)は官民合同の第三セクターとして運営されていて、その時代の背景としては、刑務所の収容率が140%くらい、どこの刑務所もいっぱいになっちゃったんですよ。で、官費だけで刑務所を運営するよりは、予算上かな、官民合同で民間で運営できる刑務所をつくろうっていうプロジェクトが上がって、それでできたものなの」

白坂「なんで大林組だったんだろう。そのころゼネコン儲かってたからかな。」

風水「もうひとつのPFI刑務所、喜連川社会復帰促進センターも、定かじゃないけど、アルソックが警備に入って、講談社だったかの大手の出版社が教育プログラムを運営しているみたい」

久松「兵庫県にも確か一箇所あったかもしれない。昔、仕事の話をもらったけど、日が合わなくてってことがあったな(播磨社会復帰促進センターというところでした)」

白坂「そうそう、そんないきさつがあって、小竹さんもGNJのトレーニングに来ていて、ゲシュタルトがいいってことになってやり始めたんやろね。私は2回目くらいから参加したんだったかな。東京の代々木オリンピックセンターでやってるときに参加して、そのときに風水がワークをしていたのよ。まあこんな複雑に絡み合った人生があるのかと思って。まさに、ゲシュタルトとの出会いは必然だったと思ったよ」

シャンプーボトルと蛸の絡み

久松「風水の人生? これ個人的な興味というか、関心からなんだけど、風水さんの人生について少し聞きたいな。もちろんここで話せる範囲でいいし、言いたくないことは言わなくていいんだけど」

風水「ちょうど今、自分の人生を半分書き出していて、そこに、足を突っ込むことになったのは、昔交際していた恋人が覚醒剤中毒者だったのね。自分は覚醒剤をやめさせようとして、それこそ反省させようとしていて、てんでうまくいかなくって、それで、すったもんだあって、服役に至ったの。はしょりすぎ? 飛ばしすぎたかな」

久松「いやぜんぜん。はしょってかまわない」

風水「うん。で、逮捕された後は、判決前の、自分が書いた手紙が最近出てきたんですよ。薬物依存症者の回復を生涯の仕事、課題とすると書いていたのがでてきて。それが自分の未完了でもある。覚醒剤依存の恋人が命を落として、それを助けられなかったってことが未完了で、それを完了させるために小学校で薬物乱用防止の教室ボランティアでやったり、アルコールとか薬物依存の自助グループに行ったりした。自分自身は覚せい剤を一切やっていないけれども、なんで薬物依存症の自助グループにいけたかっていうと刑務所でたくさん精神安定剤を飲んでたからなの。グループセラピーの場ではシャンプーって名乗ってたんだけども、そのシャンプーっていうニックネームの由来も薬がらみなの。刑務官に舌の上にのせられた薬を隠して飲みましたって言って口を開けて、そうやって貯めた薬をシャンプーボトルに隠してたことがあるのね。半月ぐらいそうやって貯めて、オーバードーズしたことがあるんだ。過量服薬。その日は、刑務所の窓ガラスを割ったということで、刑事裁判を受けてたんだけど、それに出廷したくなかったの。で、なんでシャンプーボトルに入れなくちゃいけなかったというと、やっぱり薬の不正所持なんていうのはなかなかできなくて、部屋なんて毎週刑務官にチェックされるし、ベビーパウダーの中まで確認されるからなかなか隠せなくて、ここなら絶対バレないだろって思ったところがシャンプーボトルの中だったわけ。シャンプーシャンプーボトルから薬をいっぺんにオーバードーズした後、2、3日具合が悪くなったし、しばらく口からエッセンシャルの香りがしていた。」

久松「オーバードーズ、裁判に抗議して? 死のうと思ってだったの?」

風水「いやー、とりあえず意識飛ばしとこうと思って。死のうとは思ってなかったかな。有期刑だったんで、とりあえず15年経てば出れるとわかってたから。それまで生き延びてたらいいかと思っていて、でも刑務所の生活というのはとても辛いので、悪さばかりしていて、ずっと独房に入れられてたから」

久松「大人しくいい子にしてた方が早く出られるんじゃないの?」

風水「うん、いい子にしていれば早く出られるんだけど、それはそれで自分を殺すことになるから。最初、受刑生活いい子にし始めてたら、先輩方に飯を取られたりするんですよね。お前俺のたくあん食っただろう、その数だけトンカツ寄こせって。それ以降もなんだかんだと取られ続けた。パンを半分よこせって先輩に言われてずっととられてたんだけども、半分はきついんで3分の1でもいいですかって言ってみたんだ。けどその先輩、3分の1っていうことがどうしてもわかんなくて。いろいろ教えたんだけども結局3分の1の意味がわかってもらえなかったこともあった。わかんないから半分でいいよって、半分渡し続けたという笑」

久松「それは大変やったね笑。ちょっと前に話題になってた、ケーキの切れない非行少年たちと同じなんだ」

風水「うん。刑務所には文字が書けないっていうもたくさんいた。そんなふうな、もとからの生育歴がおかしいっていう中年たちがいましたね」

白坂「おかしいっていうか、教育を受けられなかったっていうか」

風水「刑務所出所したときには所持金1000円だけで、10年刑務所で働いてたら大体10万円ぐらいは持って出れるんですけど、俺の場合は刑務所の中でで国家賠償30件ぐらい起こしてて、その裁判費用で逆に借金1,00万円以上抱えて出所したの」

久松「すごいな。刑務所で借金したの」

風水「勝訴見込みありということで訴訟上の救助が認められて、手首を噛み切らなきゃいけなかったこの保護房が悪いだろうとか、この日飯を与えてくれなかった刑務官が悪いだろうって訴えたんだけど、そうすれば刑務所の言い分が文書で手に入るわけ。それを見たいがためにたくさん訴訟したんですね。女子刑務所は髪が長くてもいいのに男子刑務所の受刑者は強制的に丸坊主っておかしくない?男女同権なのにどういうことなのとか訴えた。結局すべて敗訴した。成人マークのないエロマンガなんで制限されなきゃいけないのとか。どこからがエロ本なのって。葛飾北斎のタコの絡みなんていうのも没収なのね。」

葛飾北斎「海女と蛸(あまとたこ)」

久松「そんなのを頼んだの笑?」

風水「うん。購入しました笑。これはOKっていう微妙なあたりを知りたくて」

久松「何ならOKだったの? マンガは」

風水「マンガはね、ヤングジャンプで連載されていた『ふたりエッチ』は、雑誌はOKなんだけど単行本はダメだったの」

久松「ふたりエッチはエロいでしょ」

風水「雑誌の中に連載されてるのは大丈夫だったんだけどね笑」

白坂「そんなマンガ知らんわ。そんなの知ってんの笑」

風水「で、出所したとき所持金が1000円だったから、交通費もないわけ。だから刑務所の職員に車を出してもらって、都内の福祉事務所に取り付けてもらって、そこで生活保護の申請をしたの。杉並区の福祉事務所だったんだけども、なんで杉並区だったかって言うと、刑務所の中で長年文通をしてくれていた映画監督がいて、死刑囚の支援や冤罪の支援もしていた人なの。その人は、ロス疑惑、三浦和義さんの件でも一番の支援者。オウム真理教の信者たちが国から迫害されているっていうことでも支援をしていた。昔、ウルトラマンタロウとかあばれはっちゃくとかを撮っていた監督」

風水「それで出所したときに行った福祉事務所のそばにその映画監督のおじいちゃんが住んでて、その人のお手伝いをしようと思ってたの。その人の近くに住居を構えて、そこから、最初の、小竹広子弁護士の法律事務所につなげてもらった。その傍ら俺は、刑務所で飲んでいた向精神薬がまだ続いていたからしばらく精神科に通っていた。抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬。娑婆に出たら環境が良くなったから薬は必要なくなったんだけども、1ヵ月ぐらいかかったかな薬を全部抜くのに。で通っていた精神科から中間施設を紹介されたの。アルコール依存症の人とか薬物依存の人とかギャンブル依存の人、摂食障害の人たちが、社会に戻っていくための施設。そこに通うようようになった。そこからアルコール依存症の人の自助グループにも顔出すようになったんです。」

自助グループとゲシュタルトセラピー

久松「そういったことが背景にあって、ゲシュタルト療法と出会ったということなんだけど、自助グループや他のセラピーグループとは違う良さがあると、ゲシュタルトには感じたわけなんや。それで、罪ゲシュに至るというわけ?」

風水「そうです。罪ゲシュにも何回か、自助グループの仲間が参加したり顔出したり。ACの自助グループから参加した人もいた。ACの自助グループでも12ステップを使うことが多いけど、その4番目に、紙に過去のことを全部書き出して棚卸しするっていうのがあって、そーゆー自分の振り返りをするグループの仲間がけっこう来てくれて。東京の方でも、俺の、スポンサーっていって、12ステップを手渡してくれる先輩が何回も来てくれた。アルコホリックアノニマス、アルコール依存症者のグループでも、ゲシュタルトの祈りってちゃんと知れ渡ってるんだ」

久松「へえ、知られてるの。12ステップだけじゃなくて?」

風水「あとはね、平安の祈り、ニーバーの祈りっていうのもよく知られてる。俺、このふたつの祈りを額に入れてるんだ」

久松「ニーバーの祈り? ああ、あの神様のお祈りね。ゲシュタルトの祈りと、それがセットになってるんや。ちょっとそれ、読み上げてください。読者のために」

風水「平安の祈り?

神様、私にお与え下さい。

変えられないものを受け入れる落ち着きを。

変えられるものを変えてゆく勇気を。

そしてそのふたつを見分ける賢さを。

久松「これ、もともとどこが出展なんでしたっけ?」

風水「アメリカの神学者・倫理学者のラインホルド・ニーバーさん。まあそんなんで、ゲシュタルトの祈りというのもけっこうなじんだものだった」

白坂「せやんな。ACのグループでも今、けっこうゲシュタルトは人気があるよ」

久松「このふたつの祈りが並列されてるのが面白いな。ゲシュタルトの祈りは、どちらかというと個人主義的な文脈で語られることが多いでしょ。私は私、あなたはあなた、で、自分で自分の人生を主体的に選択して、引き受けていきましょうっていう。ニーバーの祈りは、人生、どうしようもないというか、変えられなここともあって、それを受け入れることも大切って言っているから」

風水「TA(交流分析)でも言うでしょ、過去と他人は変えられないって」

白坂「自分が変われば周りも変わる、みたいなね」

風水「ひいらぎさんていうAAメンバーの人が、心の家路っていう依存症の回復についてのスタディのサイトをもってて、そこでもゲシュタルトの祈りとニーバーの祈りが原文といっしょに紹介されてるよ」

白坂「ゲシュタルト療法って、個人主義的に捉えられることが多いけど、私、最近はそうじゃないんじゃないかなって思う」

久松「うん。違う方向に向かってると思う。ゲシュタルトセラピーが出てきた頃は、時代的にも、個人主義なところに注目されたんだと思うけど、もともと、ゲシュタルト心理学者のクルト・レヴィンの場の理論だって、グループには個人を超えた全体性があるってことやしね(トランスパーソナル心理学につながる流れも、パールズたちが活躍していた当初からあったのではないかと思います)」

白坂「ゲシュタルトの祈りも、読み解いていくとすごく面白いと思う。あなたと出会えたら素晴らしい、けど出会わなくてもそれもまた素晴らしい、素晴らしいって訳されることもあるけど、出会わなくても仕方がない、っていう方が私は好きかな。それを受け入れるってね。

でね、そんなこんなでさ、風水とも出会って、風水が、罪ゲシュみたいなことをしたいってFacebookに投稿してて、そこにコメントしたらしようしようってことになった。大阪で会って話そうって」

風水「2017年4月18日日に会ってるよ。Googleフォトで出てきた」

久松「そういうとこマメだな笑」

風水「瞑想仲間との写真もいっしょに出てきたな。なんでかな。OSHOのダイナミック瞑想」

久松「いろいろやってるのね。こんな格好して、出家したの?」

風水「出家はしてないけど、罪ゲシュのあんなチラシ作ったから、ちょっとそれっぽい格好しとこうと思って笑。お坊さんですかってよく声かけられるんだけど。

つみ⭐︎げしゅでの体験

久松「で、罪とゲシュタルトが始まって、どんな感じだったのかを聞きたいな」

白坂「最初は、堅気の女の人と話せるのが信じられへんみたいな笑。参加して初めて泣くことができたっていう人もいた。自分の人生を語ること自体がそれまでなかったんだと思う。初めて人生をふりかえって語って、それを批判なしに聞いてもらえるという場がなかったんやな」

久松「プリズン・サークルでもそういう人たちがたくさん登場していたな。やっぱり、自分の人生を言葉にして他の人と共有することで、初めて感情をもって自分に触れることができるということなのかな」

白坂「グループの中で語って、共感してもらえるということが、社会に受け入れられたっていう体験にもなるんじゃないかな。

最初は、何じゃこれって思ってたっていう人もいたけどな笑。ゲシュタルトの場を。これは宗教かいなって。

でも、何回も参加して、自分のことを話したり、誰かのお父さん役をやって抱っこしたり、なんてことをしていくうちに、何かが動くねんな。お父さんって呼ばれて、ヨシヨシってしたりね」

久松「人生で経験したことがないこともやるわけね。それは、ゲシュタルト療法とかサイコドラマ独特の体験かも」

風水「来てくれる人たちがみんな優しいからね。居心地いいみたい」

白坂「そうそう。でも私は怒るけどね。それはあかんやろって」

久松「他のグループセラピーと比べて、ゲシュタルトセラピーの特徴って、どんなところですか? お父さん役になったり、いろんな人生を追体験できるということは、ゲシュタルトの良さのひとつだと思うけど、他には?」

風水「ファシリテーターというプロフェッショナルがいるということは、自助グループと違うところかな。自助グループはフラットな関係だから、居心地いいってのはあるけど、尖ってないっていうか。突出したところがないというか。ゲシュタルトだと、ファシリテーターを中心に場ができて、動いていくところがある。言いっぱなし、聞きっぱなしだと、パターンができちゃうことがあるから」

白坂「同じ話を何度もして、かえってストーリーを強化することもあるよね」

風水「言いっぱなし、聞きっぱなしだけじゃなくて、人生の棚卸しのプログラムもあるにはあるけど、グループの中で自分を深堀りするには、ゲシュタルトの方が向いてるかな」

白坂「うん。深掘りできるし、ファシリテーターや他のメンバーと関わるから、クリエイトされていくやん。固着したゲシュタルトが新しくなっていく。こういう生き方もあるんやとか、こんな考え方があるのかって、対話を通じて知ることができるのも、グループのいいところやね」

風水「そろそろ8時でさ。今、東京も夜は10時までなんだよね。そろそろ出ないと、俺の食事会の時間が」

久松「出かける気満々やな笑。ではそろそろね。どう閉めよう?」

白坂「じゃあ、ゲシュタルトをして、どう変わったか?」

風水「うーん。生きるのが、楽になった。ありのままの自分でいられる時間が増えたって感じ。いい人やめて、だいたいありのままで生きてるから、なかなか社会生活は根づかないんだけどね笑」

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